有料職業紹介事業の手数料について

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有料職業紹介事業の手数料について

有料職業紹介事業の手数料について

有料職業紹介事業は、その名のとおり、紹介手数料を求人企業から受け取るのが基本となっており、求職者からは特定の場合を除いては手数料を受け取ることはできません。ただし、転職情報ポータルサイトとしてであれば、情報閲覧料といった形で求職者から求人に対する手数料ではなく求人広告閲覧と求人紹介会社へのコンタクト情報閲覧手数料をとるビジネスを行っている会社は存在しています。国内ではビズリーチがこれに該当しますが、有償であるだけに利用者は限定されることになりますので、高額報酬を提供するエグゼクティブの転職情報に限ったものとなっています。この場合には有料職業紹介事業ではなく、単に案件情報紹介サイトに留まっているため、一般の紹介事業とは異なるものといえます。ただ、応募者自身が転職情報サイトを有償で閲覧するという発想がまったくないため応募者はすべて無料というのは市場では利用者には当たり前の状況となっていますので、閲覧だけでも応募者からお金を徴収するビジネスモデルはかなり難しい状況といえ、適法かどうか以前にビジネスとして成り立たないのが現実です。通常の有料職業紹介業の手数料請求もでるは求人者から受け取ることが基本になっています。

有料の手数料は求人者(つまり雇用主)から手数料を受けることを意味し求職者から手数料を取ることはできない。

法的に求職者から手通料をとることができないのがこのビジネスの基本ですが、有料職業紹介事業者が求人業主から受け取る手数料は、上限制手数料、届出制手数料といった2つに分類されており、この中身についても法的にそれぞれ規制がされている状況にあります。 まず、上限制手数料は、厚生労働省による定型的な規制の下で手数料を決定し受け取るものです。支払われた賃金額の10.5%相当額が手数料となもものです。 一方、届出制手数料は、有料職業紹介事業者が厚生労働大臣に届け出た額の手数料を受け取れるというものです。手数料の届出に際しては、額の設定等に関し細かい規制が定められていますのでそれにのっとった設定を届け出る必要があります。 求職者(労働者)側から手数料を受け取ることは法律で原則として禁止されています。例外的に、芸能家、モデル、科学技術者、経営管理者、熟練技能者については、一定の上限を超えない範囲で手数料を受け取ることが可能とされています。 この項目ではその詳細についてひとつずつご説明してまいります。

具体的手数料について

紹介手数料

有料職業紹介事業の紹介手数料については、「上限制手数料」と「届出制手数料」のいずれかを選択して徴収することが出来ます。このどちらを選ぶかは厚生労働大臣に届け出る際にきめなくてはなりません。ただし、求人者と再就職斡旋を行なう雇用主の双方から手数料を徴収する場合は、その合計額に対して最高額及び上限額が適用されていますので注意が必要となります。

<上限制手数料の場合>

上限手数料の場合には、支払われた賃金額の10.5%相当額(同一の者に継続6ヶ月を超えて雇用された場合は6ヶ月間の雇用に係る賃金額の10.5%相当額)が上限となります。上限制手数料の場合は、手数料徴収の基礎となる賃金支払日以降に徴収することが出来ます。

ただ、最近のビジネスモデルではこの金額でのあっせんを行っているところは非常に限られているといえ、制度は残っていますが、実際にこちらの手数料を適用している有料紹介事業者は非常に限られている状況です。

<届出制手数料の場合>

届出制手数料の場合には当然のことながら上限が決められています。当該求職者の年収の50%を超えるような定めをすると届出書は役所では受理されません。つまりそれ以下の設定でないと事業とは認められないということです。現実には50%の手数料を払う奇特なクライアントは存在しませんので心配は要りませんが、制度上はそうなっているということです。実際には求職者の年収の10~30%程度が紹介手数料の相場のようで、これまでは30%がもっとも多いものとなってきています。ただしクライアントとの折衝で個別の案件では事業者がディスカウントをさせられるケースも珍しくないようです。

届出制手数料の場合は、求人者からは求人申込み受理日以降に、再就職斡旋を行なう雇用主からは求職申込み受理日以降に、それぞれ徴収することが出来ます。 職業紹介に対する成功報酬制にしているケースがほとんどで、リテーナーフィーと呼ばれるような前受け金を受け取るケースは外資系のクライアントで一部今もこうした商慣習が残っているだけで、それ以外はほとんどなくなっているのが実情です。

このどちらの手数料制度を選択しても、変わらないのは成功報酬であるということです。このビジネスの性格上、先に手数料をいただくことはありえません。したがって雇用が決まるように案件成立を促進することが事業者にとっては非常に重要となるのです。

課税事業者と免税事業者では手数料の取扱いが異なる

平成9年の消費税が5%へ引き上げられてから、免税事業者と課税事業者で手数料の取り扱いが分けられ、手数料上限額が異なることになっています。免税事業者は、事業の遂行に必要とされる商品等の消費税率引上げに伴う価格上昇分(仕入れ割合にかかる価格上昇分)のみを考慮した引上げ幅になっています。これは、仕入れ等に係る消費税の負担増分を手数料に上乗せすることで、事業者の負担増を避けるための措置になります。一方、課税事業者はそれに加え、自らが納付すべき消費税額分を考慮し、手数料額に適正に転嫁する必要があることから、手数料の上限額に違いが生じているのです。今後消費税が8%から10%になればさらに同様の措置が継続することになるものと思われます。

消費税率 5%時 8%(現状) 10%値上げ時
受付手数料 課税事業者 670円 690円 710円
非課税事業者 650円 660円 660円
上限制手数料率 課税事業者 10.5% 10.8% 11%
非課税事業者 10.2% 10.3% 10.3%
上限制手数料率
(臨時賃金除く)
課税事業者 14.2% 14.5% 14.8%
非課税事業者 13.7% 13.8% 13.9%

求職者からの手数料を例外的にとれるビジネスも存在

職業紹介事業では基本的に求人をする事業者から手数料をいただくものがベースのビジネスモデルであり求職者からは手数料をとらないのが普通なのですが、特定の職業については求職者からも手数料を徴収することができるようになっています。

<求職受け付け手数料は芸能家、モデル、家政婦、配ぜん人、調理師、マネキン等が可能>

芸能家、モデル、家政婦(夫)、配膳人、調理士、マネキンといった職業にかかわる求職者から求職申込みを受理した場合には、求職申込み1件につき、670円を上限として手数料を徴収することが出来ます。金額的にはたいしたものではありませんが、昔からのそれぞれの業界の商慣習をそのまま維持する形でこうした業種については手数料をとることができるのです。釈然としない部分もありますが法律で認められている以上仕方ないものです。ただ、こうした職種については、いわゆる職業紹介ビジネスでは中心的な要素ではないためほとんど大勢には影響のないものということができます。

<求職者手数料 芸能家、モデル、経営管理者、科学技術者、熟練技能者の職業>

また、芸能家、モデル、経営管理者、科学技術者、熟練技能者の職業については、求職者から就職後に支払われた賃金額の10.5%相当額(同一の者に継続6ヶ月を超えて雇用された場合は6ヶ月間の雇用に係る賃金額の10.5%相当額)を上限に手数料を徴収することが出来ます。

但し、経営管理者、科学技術者、熟練技能者の職業については、その求職者の就職後の年収が700万円を超えることが条件になります。この求職者手数料は上限制手数料ですので、手数料徴収の基礎となる賃金支払日以降でないと徴収することは出来ません。実際問題として、モデル事務所などはこうした仕組みを活用しているところもありますが、経営管理者や科学技術者、熟練技能者がこうした形でどれだけ仕事をしているのかについてははっきりわからないのが実情です。近年では個人的に才能をもった当該技術者や職人の場合には個人であっても業務委託契約で仕事をするケースもありますからこうしたあっせんで仕事とする人がんにがいるのかどうかはよくわからない部分もあります。あくまで法律上のしくみである可能性もあります。職業紹介ビジネスを想定している法律はかなり古いものがベースになっていることから、適宜実情にあわせて修正が加えられていることは確かですが、求職者手数料が実際に発生している人はかなり限定的となっていることだけは間違いありません。

職業紹介ビジネスの競争相手

職業紹介ビジネスにとっては同業者がもっとも卑近な競争相手となりますが、最近ではLinkdInなどのソーシャルメディアや、クライアントが直接的に広告出稿して募集をかけていく転職情報ポータルサイトなどが大きな競争相手となります。とくにクライアントが直接ネットのこうしたサイトを使って募集告知をしてしまいますと、転職紹介事業の成功報酬のコミッションを一切支払う必要がなくなるため、もっとも脅威になるのはソーシャルメディアなどでの告知ということになりそうです。したがって職業紹介事業ではいかに募集要件にマッチした人材を集められるかが大きなポイントになりますし、複数の応募者の中から選択できる精度の高い応募者のショートリストを提供できるかどうかも勝負のしどころとなってくることになります。こうした転職者情報ビジネスは単に情報だけ提供するだけですと職業紹介事業者の存在価値はなくなりますが、一定のフィルタリングによりもっとも適職と思しき候補者をしっかり絞って提供できるかどうかが付加価値をつけられるかどうかの分かれ道になります。クライアントが直接的にネットメディアで募集をかけるよりも効率が高く、結果としてレベルの高い候補者を確保できるかどうかがこのビジネスの評価の分かれ目ということができます。

人材紹介業を使いなれている業界をターゲットにする

職業紹介事業者の手数料における料率というのは近年のこうしたソーシャルメディアなどの台頭から、高いレートを維持することが難しくなる状況にあります。外資系の一部のIT企業は一切外部の職業紹介事業者を使わずに中途採用を自社で行う形になっているところもありますし、手数料のレートを就職決定者の年収の30%から20%にディスカウントに応じた職業紹介事業者だけを採用するといった方針を打ち出しているところもあり、30%という届出制の上限は定型化しているわけではなくなっています。もともと国内のこの業界で定着している30%というコミッションが高いのか安いのかはなかなか判断が難しくなりますが、欧米のリクルーターと呼ばれる同種のビジネスが30%のマージンをとっていたのが国内でも定着してきたものであり、米国ではいまだにこの30%が定番化しているようです。ただし、アジア圏ではオーストラリアを含めてこのレートが下落傾向にあることは事実のようで、今後30%を死守できるかどうかは業界全体の課題になりつつあります。そんな中で、人手不足や的確な知見を有するものがなかなか集まらない業界についてはいまだにこうしたレートがしっかり守られていることがわかります。たとえばゲーム業界などでは、適切な人間がなかなかつかまらないといったことから、高い手数料を支払っても適格人材を探したいといった動きがでています。また広告業界では、旧来のレガシー広告から、テクノロジーベースのインターネット広告関連で知見の高い存在を雇用したいことから人材紹介業を積極的に利用する職種が増えています。このようにスムーズにビジネスになりやすい業界、業種、職種というものをしっかり見分けてクライアントにアプローチしていくことがビジネス上重要といえるのです。

安定的事業に必要な粗利について

業態としては異なりますが、職業紹介の親戚筋である人材派遣業は大手の場合粗利が低いところで13%台、高いところは28%程度を確保しているところがあります。高い粗利を確保できているところは原価率が低く、表面上の利益率が3割確保できているところが多いのが実情となります。有料の職業紹介についても、あっせんした案件の求職者の年収の3割が確保できるとかなり楽な商売になることは間違いありません。しかしこのレートが下落して2割を切るような形になってくると数をこなすことを強いられるため、規模感を増大する必要も生じることになり、経営状態は大きく変化することになります。粗利ベースで想定売上げのケースを事前にいくつか計算してみますと、利益率が下がったときの獲得案件数の増大ボリュームをイメージすることができますので、適正獲得利益をよく検討しておくことが重要になります。ネットを中心にしたビジネスとした場合、獲得件数を情報修正することはなかなか簡単には実現しないのが現実ですから、無理のないラインがどこなのかをしっかち見極める必要があります。とくにサーバーの管理を含めてイニシャルコストと毎月の固定的運用コストがかかることは間違いありませんのでどこが損益分岐点になるかをよく理解しておく必要があるのです。