人材紹介に必要な書類の解説(1)求人者と交わす書類
人材紹介事業は、求人者(求人企業)と求職者(就職・転職希望者)をマッチングする事業です。
人材紹介会社は、マッチング事業者として、求人者・求職者の間に立ち様々なやりとりをしますが、そのやりとりの中で求人者・求職者と数多くの書類を交わします。
法的な観点から必要なもの、運営的な観点から必要なもの、書類の必要理由は様々ですが、一般的な人材紹介マッチングを行うために必要な書類について、ポイントを説明します。
書類は、大分類として、「求人者(求人企業)と交わす書類」「求職者(就職・転職希望者)と交わす書類」に分けられます。
今回は、「求人者(求人企業)と交わす書類」について、ポイントを説明します。
求人者(求人企業)と交わす書類
- 人材紹介申込書
- 求人票
- 推薦状
- 雇用条件通知書
- 紹介手数料請求書
- 人材紹介契約変更覚書
- 退職証明書
1、人材紹介申込書
企業が人材紹介を依頼する際に、人材紹介会社に提出する書類です。
人材紹介申込書には、人材紹介会社と求人企業の間での様々な決め事を記載します。
企業・人材紹介会社間のやりとりをスムーズにするため、一般的には「申込書」の形式を採る人材紹介会社が多いですが、人材紹介会社によっては「契約書」の形式を採っている会社もあります。
また、求人を依頼する企業の意向により「契約書」の形式を求められることもあります。
その他「人材紹介依頼書」や「求人申込書」等の名称を使用している人材紹介会社もあります。
「人材紹介申込書」であっても、「人材紹介契約書」であっても、その他の名称であっても、基本的には定める内容に違いはありません。
どの形式・名称を採るかは、人材紹介会社が判断します。
どのような形式・名称であれ、この書類の性質は契約書です。
人材紹介会社と求人企業の間の契約内容を全て記載します。
記載内容に不足があると、後々、企業とトラブルになることもあるので、人材紹介における決めごとを漏れなく反映することが重要です。
記載内容の詳細は、人材紹介会社により異なりますが、一般的な記載事項は以下のとおりです。
- 申込日・有効期間について
- 求人者情報について
- 人材紹介手数料について
- 返金について
- 求人について
- 求職者について
- 個人情報の取り扱い・守秘義務について
- 違約金について
- 反社会的勢力の排除について
上記①~⑨の内、ポイントとなる部分を説明します。
①申込日・有効期間について
企業からの人材紹介の依頼には、一般的に「申込日から6か月間」「申込日から1年間」というように有効期間(契約期間)を設定します。
当然、人材の採用が決定した場合や何らかの理由で求人が終了した場合、有効期間以前であっても人材紹介の依頼は終了します。
契約期間内に人材の採用が決まらない場合は、契約期間満了前に企業に期間更新の有無を確認し、その後の扱いを決定します。
②求人者情報について
名称が申込書であっても、契約書の性質を持つ書類なので、「会社名」「会社所在地」「代表者名(または責任者名)」の情報は絶対的記載事項です。
また、絶対的記載事項ではないですが、記載があった方がよい事項としては、「担当者名」「担当者連絡先(電話・メールアドレス)」が挙げられます。
人材紹介申込みを受けた後には、すぐに企業とのやりとりが始まりますが、担当者が誰なのか、企業側が決めていない場合があります。
企業側の担当者が誰なのかを明確にすること、そしてその担当者に自身が窓口であることを自覚してもらうためにも「担当者」に関する情報の記載は、絶対的必要事項と同レベルに必要です。
③人材紹介手数料について
依頼を受けた人材紹介が成功した場合(紹介した求職者が入社した場合)に求人企業が人材紹介会社に支払う人材紹介手数料を記載します。
人材紹介申込書で最も重要な部分です。
「固定額」ではなく、「料率」で記載する場合は、計算方法も記載した方がよいです。
また、「消費税込」または「消費税別」も明確に記載しましょう。
④返金について
紹介して入社した求職者が、早期に退職した場合の返金額を記載します。
「1か月以内退職」「3か月以内退職」「6か月以内退職」「12か月以内退職」という区切りで定めることが一般的です。
最近は、「12か月以内退職」を定める人材紹介会社は非常に少なくなりました。
人材紹介手数料と同様に、「固定額」ではなく、「料率」で記載する場合は、計算方法の記載があったほうがベターです。
⑤求人について
具体的な求人の取り扱いについての決めごとを記載します。
一般的には、人材紹介会社への求人情報の提供方法、求人受付時の料金、求人の公開方法等について定めます。
「人材紹介会社への求人情報の提供方法」は、「求人票」により提供するとしている人材紹介会社が多いです。
求人票の作成作業を人材紹介会社側で行わず、求人企業側で行うこととしたい場合は、その旨を定めておいた方がよいでしょう。
「求人受付時の料金」は、一般的には0円ですので、「料金はいただきません」と記載しておきましょう。
人材紹介を使い慣れている企業にとっては当たり前のことですが、人材紹介会社を初めて使う企業は、完全成功報酬制というシステムに慣れていません。
どの時点で料金が発生するのか明確にするためにも、求人受付時の料金は請求しない旨を記載した方が、求人企業に安心感を与えることができます。
「求人の公開方法」は、どのような方法で求人票を転職市場に公開するかを定めておくためのものです。
人材紹介会社は、既に登録している求職者に求人を紹介しますが、WEBや紙の媒体を利用して求人票を世間一般に公開し、新たに求職者を募る場合もあります。
しかし、求人企業の中には、WEB等により自社の求人票を公開してほしくない企業もあります。
いわゆる「非公開求人」です。
その他、社名だけを非公開にする「社名非公開求人」を希望する企業もあります。
後々トラブルに発展しないように、予め求人の公開方法を定めておくことをお勧めします。
⑥求職者について
人材紹介会社が求職者を求人企業に紹介する過程における決め事を記載します。
人材紹介会社は、求職者を推薦したとしても、その求職者のすべての情報を把握しているわけではありません。
履歴書・職務経歴書の記載情報に絶対に誤りがないか、合格したら確実に入社するか、人材紹介会社がそれらを保証することはできません。
しかし、求人企業は、紹介された求職者の履歴書・職務経歴書の情報に誤りがないこと、合格したら入社してくれること等を人材紹介会社に期待します。
それらの考え方の齟齬やリスクを回避するために、人材紹介会社ができること・できないことを明確にしておくべきです。
また、人材紹介会社が求職者を求人企業に推薦した後、求職者と求人企業が直接やりとりをしてしまうと人材紹介会社としてスムーズに手続きを運べない場合があります。
また、人材紹介手数料の支払いを免れるために、求職者と勝手に接触し、選考を進める企業も少なからず存在します。
そのようなリスクを回避するために、人材紹介後の求職者とのやりとりに関する決め事も定めておいた方がよいでしょう。
ちなみに、求人企業に紹介した求職者が不採用となった場合でも、企業と求職者の直接接触期間制限を設けることが一般的です。
この場合の直接接触制限期間は、「紹介後1年間」とする人材紹介会社が多いです。
1年間を超える期間を設定すると、これを嫌がる企業も出てきます。
不採用とした過去の応募者に声をかける企業も一定数存在すると認識しておいてください。
⑦個人情報の取り扱い・守秘義務について
人材紹介会社は、求職者の個人情報を収集し、推薦の際に求人企業に開示します。
また、求人依頼を企業から受ける際に、様々な企業情報を収集します。
それらの個人情報・企業情報に関する決めごとを記載します。
⑧違約金について
人材紹介事業は、求職者を求人企業に紹介し、採用された場合に人材紹介手数料を得るというビジネスです。
逆に言うと求職者の入社が確定しないと、人材紹介料は発生しません。
ごく稀ですが、求人企業の中には、その成功報酬制の盲点を突き、紹介された求職者を採用しておきながら、求職者と口裏を合わせ、人材紹介手数料の発生を回避しようとする企業があります。
そのような場合のために、違約金を設定します。
求人企業との信頼関係を崩さないために、違約金を設定しない人材紹介申込・契約を受ける人材紹介会社がありますが、必ず違約金の定めは設けるべきです。
「違約金の定めを拒否する求人企業=約束を破ることがある企業」と認識しておいた方がよいです。
⑨反社会的勢力の排除について
これは決まりきったことですね。
2、求人票
企業から依頼を受けた求人情報を書面に表したものです。
自社(人材紹介会社)で作成するのか、求人企業に作成してもらうのかは、人材紹介会社の方針によります。
大手人材紹介会社は、自社で求人票を作成するところが多いです。
自社で作成した方が求人企業に対してはサービスのアピールになりますが、手間がかかります。
自社での手間を減らすのであれば求人企業に作成を依頼しましょう。
求人票にはなるべく多くの求人情報を記載しておいた方がよいです。
求人情報が少なく、不明確な求人票であると、求職者から質問がある度に求人企業に問い合わせをしなくてはなりません。
各種手当、月平均残業時間、配属部署の人員構成など、絶対的必要情報でない情報も、なるべく収集した方がよいです。
そのような細かい情報を求職者は知りたいと思っています。
また、ホームページ等に求人票を掲載する場合、その記載内容には注意が必要です。
法律が求める最低限の情報が記載されているか、記載禁止事項が含まれていないか、求人票を掲載する前に今一度チェックをしましょう。
3、推薦状
求職者を求人企業に紹介する際には、「履歴書」「職務経歴書」に加えて、人材紹介会社が記
載する「推薦状」を添付することが一般的です。
推薦文をメール本文に記載してもよいのですが、推薦状を書面で求める企業もあります。
推薦状の内容は、とても重要であり、書類選考の合否に影響を与えることも少なくありません。
推薦状には、履歴書・職務経歴書に記載されていない情報、または記載されているが特筆すべき情報を記載しましょう。
特に、離職理由・転職理由、希望給与、入社可能時期等は、企業が把握したい情報です。
それらの情報を推薦文に上手く盛り込めると、良い推薦文になります
4、雇用条件通知書
求職者の採用内定が決定した際、求職者に雇用条件通知書を交付する必要があります。
求職者は、雇用条件通知書を見て、その企業に入社するかどうかを判断します。
雇用条件通知書の作成義務は求人企業にありますが、それを求職者に提示するのは人材紹介会社の役目です。
雇用条件通知書の記載事項は、労働基準法に定められているため、企業が作成した雇用条件通知書が法的基準を満たしているかを判断することが人材紹介会社には求められます。
求人企業が作成する雇用条件通知書は、必要記載事項が漏れていることがあるので、しっかりと内容をチェックするようにしましょう。
また、求人企業が雇用条件通知書を持っていない場合には、この書類を人材紹介会社から渡すことで、書類の作成がスムーズに進みます。
5、人材紹介手数料請求書
人材紹介が成約に至ったとき(=紹介した求職者が入社したとき)、人材紹介会社が求人企業に紹介料を請求する書類です。人材紹介は、一般的に「入社」をもって成約となるため、紹介手数料請求書は「入社日以降」に求人企業に送付します。
請求書は一般的な請求書と同じで構いませんが、人材紹介会社によっては、人材紹介手数料の算出根拠(計算方法)を記載しているところもあります。
人材紹介手数料の計算が複雑な場合は、算出根拠を記載するか、事前にメール等で計算根拠を通知した方が丁寧です。
また、人材紹介が成約に至ったとき(=紹介した求職者が入社したとき)は、速やかに請求書を発行した方がよいです。
ごく稀ですが、入社後・人材紹介手数料請求前に、求職者が退職する場合があります。
そういった場合でも、人材紹介手数料は発生しますが、請求書が届いていないと支払いを渋る企業があります。
企業側の立場に立てば、その気持ちは分かります。
紹介された求職者は既に退職しているのに、どうして今更紹介手数料を払わなければならないのだ、と思うのも当然です。
そのようなことにならないためにも、人材紹介手数料は、請求ができる状態になったら速やかに請求しましょう。
6、人材紹介契約変更覚書
人材紹介の契約内容は、人材紹介申込書(または人材紹介契約書)に記載されますが、求人企業の要望により事後的に変更する場合があります。
例えば、以下のような場合です。
「新たに依頼する営業職求人は、現契約書とは異なる紹介手数料を設定してほしい」
「紹介された求職者は、業界経験が少ないので、手数料を減額してほしい」
「早期退職返還金の返還基準を変更してほしい」
そのような企業からの要望に対応する場合、基本となる人材紹介契約書を部分的に変更する覚書を交わします。
人材紹介における契約変更は、実は頻繁に発生します。
一度契約したからOKではなく、契約変更に備えて、変更覚書の雛形も事前に準備しておいた方がよいです。
7、退職証明書
人材紹介には、紹介料の早期退職返還というルールがあります。
求人企業に紹介した求職者が、早期に退職してしまった場合、人材紹介契約書に記載した返還金額を企業に返還するというものです。
その際、当該退職の真偽を確かめるために、人材紹介会社は求人企業に対し、当該求職者の退職を証明する書類(退職証明書)を求めます。
紹介した求職者が早期離職 → 企業から返還金請求 → 退職証明を企業に求める・・・
この早期退職に関するやりとりが、人材紹介事業において、もっともデリケートな場面です。
このデリケートな場面を、スムーズに乗り切れるように、書類・手続きのフローは、予め準備しておいた方がよいです。
おわりに
以上が人材紹介実務において、「求人者(求人企業)と交わす書類」です。
必要に応じて他の書類が発生することもありますが、これらの書類があれば基本的には、求人者に対応する業務は滞りなく行うことができます。
業務がスムーズに運べるように、「求職者(就職・転職希望者)と交わす書類」と併せて、確かな書類を準備しておきましょう。
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