知っておくべき職業安定法
【人材紹介ビジネス】絶対に知っておくべき職業安定法
職業安定法とは、簡単に言えば「求職者を守るための法律」です。
そのため人材紹介ビジネスは、職業安定法を遵守して運営しなければいけません。もし違反してしまった場合には、6か月以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑が適用される可能性があります。
このような事態にならないように、職業安定法についての理解を深めておきましょう。
なお本記事は、「職業安定法(厚生労働省)」に準拠して執筆しています。
人材紹介ビジネスを行うにあたり、知っておきたい職業安定法
職業安定法は、人材紹介ビジネスを行う人に特化した法律ではありません。そのため、必ずしもすべてを理解している必要はないでしょう。
そこで本記事では、職業安定法のうち、人材紹介ビジネスに関係のあるものだけを抜粋して解説します。どれも大事なものなので、絶対に理解しておきましょう。
職業の選択を規制してはいけない
職業安定法第2条で定められています。
「退職した場合、競合他社への転職を禁止する」などを契約条件としてしまうと違反することになります。
人材紹介ビジネスの場合、求人を出すのはあなたではないのですが、求人申込みがあったときには、職業選択の自由を侵害していないかの確認を行う必要があります。
もし侵害しているのに気がつかず、そのまま求人申込みを受理してしまうと、人材紹介ビジネス業者が「善管注意義務」(民法第644条)に違反したことになります。その結果、あなたにも責任が生じる可能性があるため気をつけましょう。
何かの要素によって、待遇を変えてはいけない
職業安定法第3条で定められています。
何かの要素とは、人種や国籍・性別・社会的身分などのことです。これらを理由として、差別的な扱いをしてはいけません。
たとえば、女性であることを理由に、紹介する企業の数を減らすなどを行ってしまうと違反になります。
また、「男女雇用機会均等法」や「雇用対策法」「有期雇用労働法」にも気をつける必要があります。
「男女雇用機会均等法」では、性別を限定しての募集や採用を禁止しています。
これによって、たとえば「10名採用のうち、男性7名・女性3名を採用する」などの求人をしていけないことになっています。
また、「雇用対策法」では、年齢制限をした求人も禁止しているのです。
そのため、「〇歳以下」といった求人は違反になります。
さらに、「有期雇用労働法」では、「同一労働・同一賃金」を掲げており、正社員と非正社員の待遇に差をつけることを禁止しています。
これによって、正社員と非正社員で同じ業務内容にも係らず、賃金に差があるような求人は違反になるのです。
これらの理由で、
- 男女で差をつける
- 年齢制限をする
- 正社員と非正社員で差をつける
以上のような求人申込みを受理してはいけません。
これらの求人を扱うことも、職業安定法第3条に違反することになるからです。
もし気づかずに求人申込みを受理してしまうと、「善管注意義務」(民法第644条)に違反したことになります。その結果、あなたにも責任が生じる可能性があるため、気をつけましょう。
労働条件を正確に明示しなければいけない
職業安定法第5条の3で定められています。
明示しなければいけない事項は以下です。
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間の有無 有りの場合には、期間と試用期間中の労働条件
- 就業場所
- 就業・休憩時間
- 休日
- 時間外労働の有無
- 裁量労働制を採用する場合は、その旨と内容 ※1
- 賃金
- 固定残業代を採用する場合は、その旨と内容 ※2
- 加入保険の内容
- 募集者の氏名または名称
- 派遣労働者として雇用する場合は、その旨
※1 裁量労働制の内容とは
裁量労働制の種類 何時間分働いたとみなすか
※2固定残業代の内容とは
- 基本給
- 固定残業の時間と相当する額
- 固定残業時間を超えた場合の賃金
労働条件を明示するタイミングとしては、「求職者と最初に接触する前」です。
「最初の接触」とは、実際に会う時点ではなく、求職者との意思疎通(メール、電話)が発生する時点のことなので、注意しましょう。
つまり、求職者と接触してから「この求人は、○○という内容で」と説明を始めるのでは遅いということです。
個人情報は厳重に保管しなければいけない
職業安定法第5条の4で定められています。
人材紹介ビジネスを行う際、求職者の個人情報を収集する必要があります。
その際、収集できる情報は、業務目的達成のために必要な範囲内です。
以下の情報は、理由がなければ収集してはいけません。
- 人種・民族・社会的身分などの社会的差別の原因になる恐れのある情報
- 家族の職業や収入、本人の資産などの情報
- 容姿やスリーサイズなど差別的評価の原因になる恐れのある情報
- 労働組合に加入しているかの情報
また、情報の使用方法も業務目的達成のためのみです。
例外として、本人の同意がある場合や警察などからの求めに応じた場合は、情報の開示が認められています。
求人の申込みは、すべて受理しなければいけない
職業安定法第5条の5で定められています。
しかし以下の場合は、拒否できます。
- 法令に違反する求人申込み
- 労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適切であると認められる求人申込み
- 労働関係法令違反の者からの求人申込み
- 労働条件の明示が行われていない求人申込み
- 暴力団員からの求人申込み
上記のような求人の場合には拒否できますが、その調査はあなたが行う必要があります。
その際、求人を出した企業に確認を取るのですが、この確認を拒否した企業の求人も拒否できます。
求職の申込みは、すべて受理しなければいけない
職業安定法第5条の6で定められています。
人材紹介ビジネス業者は、すべての求職者からの申込みを受理しなければいけません。しかし、その申込み内容が法令に違反する場合には、拒否できます。
人材紹介ビジネスを始めるには、国の許可が必要
職業安定法第30条で定められています。
許可を得るには、以下の事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出する必要があります。
- 氏名または名称および住所 法人の場合は代表者の氏名
- 法人の場合は、役員の氏名および住所
- 人材紹介ビジネスを行う事務所の名称および所在地
- 職業紹介責任者の氏名および住所
などの事項を記載する必要があります。
詳しくは、「有料職業紹介事業許可申請書」をご覧ください。
許可の基準
職業安定法第31条で定められています。
人材紹介ビジネスを始めるためには、以下の条件を満たし、許可を得る必要があります。
基準資産額が500万円以上あること ※1
自己名義の現金預金額が150万円以上あること ※2
個人情報を適正に管理できる環境であること
申請者が当該事業を適正に遂行する能力を有すること
※1
1事業所あたりの金額のこと
もし複数事業所を運営する場合には、事業所数×500万円が必要になる
※2
1事業所あたりの金額のこと
もし複数事業所を運営する場合には、2事業所目からは+60万円が必要になる
報酬について
職業安定法第第32条の3で定められています。
人材紹介ビジネスは、以下の場合にのみ報酬を受け取ることができます。
- 厚生労働省が定める紹介手数料を徴収する場合(=上限手数料)
- あらかじめ厚生労働大臣に届け出た採用手数料を徴収する場合(=届出手数料)
これらは、求人企業から受け取るもので、一般的には求職所から報酬を受け取ってはいけません。
例外として、特殊な場合には求職者からも採用手数料を徴収できます。
詳しくは、「【人材紹介ビジネス】売上と経費について詳しく解説」をご覧ください。
扱えない職種について
職業安定法第32条の11に定められています。
人材紹介ビジネス業者は、港湾運送業務・建設業務に人材を紹介できません。
職業紹介責任者について
職業安定法第32条の14に定められています。
人材紹介ビジネスを始めるには、従業員が適切な人材紹介ができるように教育する人(=職業紹介責任者)が必要になります。
職業紹介責任者になれるのは、以下の事項をすべて満たしている人です。
- 3年以上の職業経験があること
- 成人していること
- 他の会社の社員ではないこと(出向・非常勤は除く)
- 職業紹介責任者講習を受けて、受講証明書を発行されること
帳簿をつける
職業安定法第32条の15で定められています。
人材紹介ビジネス業者は、業務に関して厚生労働省が定める帳簿を作成し、事務所に備えて置かなければいけません。
帳簿は、労働局による定期指導の際に提出を求められるため、しっかりと管理している必要があります。
帳簿には、求人管理簿・求職管理簿・手数料管理簿があります。
求人管理簿
求人管理簿に記載するべき事項は以下です。
- 求人者の氏名または名称
- 求人者の所在地
- 求人に係る連絡先
- 求人受付年月日
- 求人の有効期間
- 求人数
- 求人に係る職種
- 求人に係る就業場所
- 求人に係る雇用期間
- 求人に係る賃金
- 職業紹介の取扱状況 ※1
※1 当該求人に求職者を斡旋した場合には、以下の事項を記載する - 時期
- 氏名
- 採用か不採用か
- 採用された場合は、採用年月日
- 無期間雇用契約を締結した場合は、その旨
- 転職勧奨が禁止される期間ん
- 無期雇用就職者の離職状況
求職管理簿
求職管理簿に記載するべき事項は以下です。
- 求職者の氏名
- 求職者の住所
- 求職者の年月日
- 求職者の希望職種
- 求職受付年月日
- 求職の有効期間
- 職業紹介の取扱状況 ※1
※1 求人管理簿と同じ内容
手数料管理簿
手数料管理簿に記載するべき事項は以下です。
- 手数料を支払う者の氏名または名称
- 徴収年月日
- 手数料の種類
- 手数料の額
- 手数料の算出の根拠
事業報告の義務
職業安定法第32条の16で定められています。
事業報告書は、毎年4月1日~4月30日までに厚生労働大臣に提出しなければいけません。これは、新規に事業を始め、前年度に実績がない場合でも提出が義務付けられています。
また、事業報告書によって、国内の求人状況などを把握するため重要なものです。
もし記載漏れなどをしてしまうと、事業にも悪影響を及ぼすため正しく記載しましょう。
事業報告書の記載事項は以下です。
- 許可番号
- 事業所の名称および所在地
- 紹介予定派遣について
- 活動状況(国内)
- 活動状況(国外)
- 収入状況(国内・国外)
- 従業員の数
- 返戻規制度の有無 導入している場合は内容について
- 従業員の数および従業員に対する教育内容
求人者・求職者への情報提示
職業安定法第32条の16第3項で定められています。
「事業報告の義務」とは別に、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」に、情報を提供する必要があります。
これは、求人者・求職者が適切な人材紹介ビジネス業者を選択するために必要なものです。
記載すべき事項は以下です。
- 各年度に就職した者の数
- ①のうち、無期雇用契約を締結した者の数
- ②のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職した者の数
- ②のうち、③に該当するか明らかでない者の数
- 手数料に関する情報
- 返戻金制度を導入しているか※1 導入している場合は、その内容
- その他、人材紹介ビジネス業者の選択に資すると考えられる情報(任意)
①~④については、「人材サービス総合サイト」に入力します。そして、⑤~⑦については、「人材サービス総合サイト」上に、情報をまとめたPDFを提出するか、自社のURLを貼り付けます。
※1 返戻金制度とは
紹介した求職者が早期退職した場合に、紹介手数料を返金する制度です。たとえば、「1か月以内に離職した場合は、紹介手数料の90%を返金します」のようなものです。
就職お祝い金の禁止
職業安定法に基づく指針の9の3で定められています。
就職お祝い金は、企業や職業の魅力によっての就職ではなく、お金による繻子欲のため、適切ではないという理論から成り立っています。
これによって、就職お祝い金を払うことが禁止になっています。
まとめ
これまで職業安定法について解説してきました。
しかし職業安定法は、改正が繰り返されています。たとえば、就職お祝い金の禁止は、2021年4月1日からの定めです。
そのため、本記事のみで判断するのではなく、厚生労働省による最新の発表などもチェックするように心がけましょう。
また、職業安定法を人材紹介ビジネス業者に向けた指針として解説しているものもあります。これもチェックするといいでしょう。(職業安定法に基づいた指針)
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